■こたえたひと:佐久間学芸員(2000/08/29, 発言番号:525)
Re[1]: サクラの木の下に草が生えにくいかについての質問
キーワード:サクラの葉 クマリン
たいへん明快な実験結果だと思います。サクラの葉には、シアン化合物の配糖体(シアン化合物に糖類がたくさんついてるもの、つまり水に溶けやすい化合物)や、クマリンという物質の配糖体が含まれています。どちらの物質も他の生物の成長にはマイナスに働きます。例えば
、細菌の増殖を押さえます。この働きをうまく利用したのが、サクラ餅であったり、その他サクラの葉の塩浸けを利用したものです。クマリンは殺鼠剤の原料に使う場合もあるようです。
ついでながら、この勝負はツバキは分が悪いですね。というのはツバキの表面にはワックス層があるので、中の成分はあまりとけ出してこないように思います。
では実際の桜の木の下はどうか、ということを考えるためには、同じことを落ち葉でも試してみないといけません。葉っぱは青いままでは落ちませんから。また、こうした作用が全ての草に同じように働くわけではありません。シアン化合物配糖体に弱い植物もいれば、そのおかげで空いたスペースにかえってはびこる耐性のある植物もいます。
桜の木の下に草が生えていないといっても、サクラの落ち葉のために生えない植物もいれば、単にサクラの陰になるから生えていないこともあるし、桜の木の下で宴会をする人間の踏みつけのためである場合もあります。
このように、実験で確かめたことと野外での観察がそのままつながらないことは結構あります。何でつながらないんだろうと観察したり考えたりすることで、また新しい発見があるかも知れません。