自然史博物館によせられた質問(質問番号:153)

■質問したひと:千葉県の久藤さん(2000/03/30, 発言番号:337)
化石馬についての質問
キーワード:馬の進化 化石馬
 中高生を対象にした「馬の進化」についての小冊子をつくろうと思っています。そこで化石馬についていろいろ教えていただけないでしょうか。
 G・G・シンプソンの「馬と進化」という本には、馬の祖先といわれているヒラコテリウムは大きさは犬くらいで、弓状の背中、歯の特徴、足のひずめの数など、現在の馬とは全く似ておらず、ほとんどウサギのような外観をしていたとあります。また、「その化石は、ほとんど単一の歯や、顎、骨のかけらなど断片的なものであり、各部分の完全に近い骨格は極めて少なく、(1950年の時点で)復元された骨格はわずか4体に過ぎない。」と書いてありました。現在ではもっと多くの骨格が復元されているのでしょうか?
 またこれらの化石から、ヒラコテリウムを馬の祖先であると断定できるのはなぜでしょうか?はじめに化石を発見したオーウェンは、ハイラックスに似た動物だと思ったそうですが、ヒラコテリウムが馬以外の動物である可能性はないのでしょうか?アメリカの博物館にもメールで問い合わせたのですが、返事が返ってきません。いろいろ調べてもよくわかりませんので教えていただけたら感謝です。よろしくお願いします。

■こたえたひと:樽野学芸員(2000/03/30, 発言番号:338)
Re[1]: 化石馬についての質問
キーワード:ヒラコテリウム 化石ウマ
 復元されたヒラコテリウムの数についてはわかりません。脊椎動物の化石(骨格)が,全身そろって発見されることはまれなことです。日本で最も多産する長鼻類はナウマンゾウです。その化石は数千個見つかっていますが、身体の各部の骨が比較的よくそろっているという程度の化石でも、3体しか見つかっていません。それらの中でも、本当にいいのは1体だけです。ということで、そんなに増えてはいないでしょう。
 ヒラコテリウムを現在のウマと直接比較しても、これがウマの祖先だという結論はでないのではないでしょう。それらの中間の形態を持った化石がたくさん知られているので、ヒラコテリウムとウマをつなぐことができる、というのが答えだと思います。
 オーウェンが最初研究したときには、まだその他の化石ウマのことがよくわかっていなかったので、ハイラックスに似た動物だという結論になったわけです。こういうことはよくあります。研究は知識の積み重ねですから、いきなり飛躍したすばらしい結論というわけにはいかないことが多々あります。今の知識ではヒラコテリウムはウマの祖先だとしか言いようがないでしょう。ただし、ヒラコテリウムは奇蹄類共通の祖先だといってもよいくらい原始的な形質を備えているとも言われています。

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化石馬についての質問(2000/03/30, No:337)
Re[1]: 化石馬についての質問(2000/03/30, No:338)