自然史博物館によせられた質問(質問番号:141)

■質問したひと:神奈川県の小林さん(2000/02/20, 発言番号:313)
イルカの脱皮についての質問
キーワード:脱皮の仕組み ヘビやトカゲの脱皮 いるかの皮膚
 私は今、人の皮膚に関する調べ物をしているのですが、その途中で、脱皮の仕組みにも興味を持ち、いくつか質問をさせていただきます。
・ ヘビやトカゲは脱皮しますが、どうして人の皮膚細胞のように、個々の細胞ではがれないのですか? どのような仕組みで角質同士がくっついたまま一枚の皮としてはがれるのでしょうか
・ 何かのテレビ番組(確かたけしの万物創世記)で、いるかが皮膚の汚れを取るために脱皮をすると聞いた記憶があるのですが、そのような記述がなかなか見つかりません。また、いるか以外の哺乳類の中にも、脱皮するものはいるのでしょうか?

■こたえたひと:樽野学芸員と和田学芸員(2000/02/20, 発言番号:314)
Re[1]: イルカの脱皮についての質問
キーワード:ヘビ類の脱皮 シロイルカ
 爬虫類の表皮では、ケラチンを含んで死滅した細胞が角質層を作っています。この角質層の外側の一部が剥がれ落ちるのが、脱皮です。ヘビ類の脱皮殻は通常全身の皮がひっついていますが、トカゲ類やヤモリ類ではバラバラに剥がれます。ヘビ類で全身の皮がひっついて剥がれるのは、
 1.全身の皮がほぼ同時に剥がれる(剥がれる時期が部分ごとに異なれば、バラバラにならざるを得ません)
 2.剥がれる皮が丈夫
という理由が考えられると思います。人間においても、日焼けなどの結果、広い範囲の皮が同時に剥がれるときは、”脱皮”らしくなります。

 ご質問のイルカはシロイルカ(ベルーガ)だと思います。シロイルカは夏に浅瀬に集まって子育てをします。同時に脱皮もします。シロイルカの体表は、普段は名前の通り白色ですが、脱皮前には皮膚が黄色くなります。脱皮は浅い河口の海水より温かい水が流れ込むところで、海底の砂に体をこすりつけて行なわれます。
  シロイルカについて書かれている本としては、
・「ナショナルジオグラフィック日本語版創刊前特別号」(1995年3月):脱皮のことはわずかにふれられているだけです。
・「クジラ・イルカ大図鑑」(平凡社):こちらも簡単に書いてあるだけです。

 「生物学辞典 第4版」(岩波書店)によると、ヘビやカエルが皮膚を更新することだけでなく、哺乳類の換毛や鳥類の換羽も一種の脱皮と見なせるとのことです。したがってイルカも含めてすべての哺乳類が脱皮すると言っていいでしょう。
 古い表皮がまとまって剥がれるという意味では、シロイルカ以外のクジラ類(少なくとも一部は)も、同様の脱皮をするはずですが、くわしい記述は見つけられませんでした。

【monitorの補足】
 シロイルカ以外のクジラ類の”脱皮”について記述してある資料を御存知でしたら、ぜひお知らせを。センザンコウやアルマジロなど、鱗を持つ哺乳類の”脱皮”についても興味があるところですね。どうなるんでしょう?

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イルカの脱皮についての質問(2000/02/20, No:313)
Re[1]: イルカの脱皮についての質問(2000/02/20, No:314)