自然史博物館によせられた質問(質問番号:13)

■質問したひと:静岡市の伊藤美貴さん(1998/03/08, 発言番号:31)
共生についての質問
キーワード:自然の中の共生 土壌生物 生態系
 今、『自然の中の共生』というテーマで例題を探しております。例えば、ミミズなどの土壌生物と森林の関係など、何かと何かは、こんないい関係を結んでお互いを活かし活かされ、共存している…という内容のもので、なるべく大きな生態系に関わってくるようなお話をご存知ないでしょうか。植物、動物、昆虫、海洋生物など、自然界であれば何でも結構です。ご存知でしたら、どうぞ教えて下さい。よろしくお願いします。


■こたえたひと:植物研究室の岡本学芸員(1998/03/08, 発言番号:32)
Re[1]: 共生についての質問
キーワード:共生 相利共生 太陽の光のエネルギー 生殖活動
 昔は、「共生」という言葉は、主として「相利共生」の意味で使われて来たように思います。
 いま使われている共生と言う言葉は、「一緒に生きている」というくらいの広い意味で使われているように思います。その意味で、最も大きな共生は「植物と動物と菌類」の共生でしょう。植物は太陽の光のエネルギーを固定し(地球上で最も大きく、効率の良い第一次エネルギー固定システム)、動物はそれを食べ、菌類はそれを植物が利用可能な形態に戻す。それぞれの生物群が、それぞれの利益を追求しているのですが、それが、お互いの生き方をより増進する結果となっている。実際に、植物は食べてくれる動物、分解してくれる菌類がいなかったら、今のように活発に再生産できないのは確かでしょう。もちろん、それぞれの植物種(植物個体?)は、食べられる被害を、最小限に押さえようと、大変な努力をしているのですが。
 植物と動物の相利共生の大きな例としては、食べられることを、植物にとって重要な生殖活動に利用する、ということが考えられます。植物にとって、動けない(動かない)ということは大きな制約です。動物に食料を提供することで、植物のこの制約を大きく改善しているものが知られています。花と花粉媒介動物、果実と種子散布動物の関係などです。これらの例は、「平凡社刊の地球共生系シリーズ」にたくさん紹介されています。
 小さな例になると、その相利共生関係の見事さは、驚くべきものになります。一例として、「イチジクとイチジクコバチ」があります。イチジクコバチの仲間は、イチジク類の子房に寄生して生きています。一方、イチジク(イチジクの仲間は、外から見えない壷の内部に花をつけます)は、このコバチによってのみ花粉媒介されるのです。詳しい内容は、博物館の展示をご覧になるか、本(田村道夫編;日本の植物-分類学研究ノート(培風館))を読んで下さい。

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共生についての質問(1998/03/08, No:31)
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