自然史博物館 質問コーナー(発言の個別表示)

■発言したひと:植物研究室の岡本学芸員(1998/03/08, 発言番号:32)
Re[1]: 共生についての質問
キーワード:共生 相利共生 太陽の光のエネルギー 生殖活動
 昔は、「共生」という言葉は、主として「相利共生」の意味で使われて来たように思います。
 いま使われている共生と言う言葉は、「一緒に生きている」というくらいの広い意味で使われているように思います。その意味で、最も大きな共生は「植物と動物と菌類」の共生でしょう。植物は太陽の光のエネルギーを固定し(地球上で最も大きく、効率の良い第一次エネルギー固定システム)、動物はそれを食べ、菌類はそれを植物が利用可能な形態に戻す。それぞれの生物群が、それぞれの利益を追求しているのですが、それが、お互いの生き方をより増進する結果となっている。実際に、植物は食べてくれる動物、分解してくれる菌類がいなかったら、今のように活発に再生産できないのは確かでしょう。もちろん、それぞれの植物種(植物個体?)は、食べられる被害を、最小限に押さえようと、大変な努力をしているのですが。
 植物と動物の相利共生の大きな例としては、食べられることを、植物にとって重要な生殖活動に利用する、ということが考えられます。植物にとって、動けない(動かない)ということは大きな制約です。動物に食料を提供することで、植物のこの制約を大きく改善しているものが知られています。花と花粉媒介動物、果実と種子散布動物の関係などです。これらの例は、「平凡社刊の地球共生系シリーズ」にたくさん紹介されています。
 小さな例になると、その相利共生関係の見事さは、驚くべきものになります。一例として、「イチジクとイチジクコバチ」があります。イチジクコバチの仲間は、イチジク類の子房に寄生して生きています。一方、イチジク(イチジクの仲間は、外から見えない壷の内部に花をつけます)は、このコバチによってのみ花粉媒介されるのです。詳しい内容は、博物館の展示をご覧になるか、本(田村道夫編;日本の植物-分類学研究ノート(培風館))を読んで下さい。

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