■こたえたひと:動物研究室の波戸岡学芸員(2001/09/11, 発言番号:1096)
Re[1]: マダイの回遊・産卵についての質問
キーワード:回遊、水温、稚魚
入り海が何をさしているのかわからないので、正確にお答えできませんが、冬眠とか”外海に出る”とかという語句があるので、産卵ないし回遊のことをお聞きなっていると判断してお答えします。
マダイは以前(といっても50〜60年前)は、春に瀬戸内海に入ってきて産卵し、やがて秋に外海に出ていくと言われていましたが、漁獲統計の正確な分析や、発信器をつけたマダイの追跡などによって、そうではないことが明らかにされるとともに、おおよその回遊や移動、産卵のようすがわかってきました。
マダイの産卵場は、瀬戸内海だとか外海だとかには関係なく、起伏のたくさんもつ岩礁域のある、水深30〜100mの海底の凸地です。場所としては、日本海では山形沖、新潟沖、能登近海、隠岐近海、太平洋側では内房沿岸、伊勢湾湾口付近、瀬戸内海では鹿ノ瀬、沖ノ瀬、豊予海峡、豊後水道、九州西海域、などがあげられます。春から夏にかけ、その年に生まれた子は沿岸の10〜30mくらいの浅海域で成長し、温度が下がり始めると沖合いの水深50〜60mくらの深みに移動し、越冬します。水温が12度以下になると、マダイはかなり活動が鈍くなった、あまり動かなくなりますが、この状態がマダイの場合の冬眠です。春になって温度が上がるとまた、沿岸近くに寄ってきて、餌を食べ成長します。この岸・沖の移動は3歳(25cm前後)くらいまで、繰り返されますが、それ以後はあまり岸にはよらず、水深50〜100mくらいところを移動・回遊します。移動・回遊の規模は海域により異なり、瀬戸内海の一部でみられる小規模なものから、黄海を東西にわたるものまで様々です。
産卵は、水温が14度くらいになると親魚が群をなして産卵場へ移動し、行われます。産卵は25〜35cmくらいから始まるようです。