■こたえたひと:動物研究室の波戸岡学芸員(2001/08/16, 発言番号:1054)
Re[1]: 魚の進化についての質問
キーワード:肺呼吸、デボン紀、進化
現在みられる魚は大ざっぱにわけると、ヤツメウナギ・ヌタウナギなどの仲間(無顎類、むがくるい)、サメ・エイの仲間、ハイギョ・シーラカンスの仲間、もっともよく目にする、コイ・ウナギ・スズキなどの仲間などになります。そして、これらの仲間のもとになる祖先は今から約3億6千年前の古生代のデボン紀という時代にはすでに分かれていました。質問にある、干ばつを避けるため陸に上がり後に両生類を生み出した祖先の魚は、これらのうちのハイギョなどグループの祖先の一部の魚です。この祖先の魚は淡水域である湖沼、河川にすみ、水の中にいるときからすでに、4つの足のもとなるひれを発達させ、また、肺呼吸もし、いつでも陸に上がれ状態に進化していたようです。そして、デボン紀の末期に頻繁に起こったといわれる日照りで湖沼などが干上がった際にも、生き続けることができ、両生類へと進化したといわれています。
海にすんでるスズキなどの魚は、1億4千万年前の中生代白亜紀ごろから爆発的に増えだし、今、大繁栄していますが、この仲間から陸にあがるものがでてくるかどうかは、進化には、気の遠くなるような時間がかかるので、はっきり言ってわかりません。海の魚にもアンコウの仲間のように、鰭をうまく使って、海底をはい回る魚や、トビハゼのようにすでに、陸上に出てきている魚もいますが、基本的なからだのつくりは両生類を生み出したといわれるハイギョなどの仲間などとは異なっています。海という水の中の世界は、住む場所としては、温度などの物理的なもの、餌などの栄養の面など、陸に比べてはるかに安定した環境(生きている化石といわれるシーラカンスがいままで、生き延びてきたのもこのため)で、また、面積も陸に比べてはるかに大きいのです。今の海の魚たちが、陸に上がらず、また、将来、陸上ですめるような体もつくっていないのは、海を積極的に利用しているからではないでしょうか。