■こたえたひと:昆虫研究室の金沢学芸員(2001/06/29, 発言番号:977)
Re[1]: 昆虫の歩くスピードについての質問
キーワード:外骨格、爪
クワガタムシも樹上で逃げるときはけっこう速く、ささささっと歩くと思いますが、速く歩く虫と遅く歩く虫の違いについて、まず考えてみたいと思います。
脚の筋肉の質の違いというよりは、脚の機能の違いととらえる方が理解しやすいと思います。クワガタムシの脚は、幹の表面にしがみついて、樹液をなめやすい姿勢を維持するために適した形態をしています。オスでは個体間の闘争に重要な役割を果たします。力強く幹をつかむための外骨格、ツメ、そして筋肉をそなえています。一方、速く歩く虫は、脚が長くて細い傾向があります。ツメもそれほど大きくありません。
お尋ねの筋肉の質に関してですが、昆虫の筋肉に遅筋と速筋のような性質の異なる2種類の筋肉があるという話は、勉強不足で知りません。跳躍筋と飛翔筋が代表的な筋肉で、1回の神経の刺激に対する筋肉の収縮の回数によって、前者が同調筋(1回収縮)、後者が非同調筋(複数回)であることが知られています。しかしながら、人間の筋肉のように、短時間の運動に適した筋肉と持続的な運動に適した筋肉の違いがあると私も思います。前者が跳躍筋で後者が飛翔筋に相当するでしょう。
研究者が少なくて、まだまだ未解明なことが多い昆虫ですが、節足動物の中で最も進化したと言われているグループですから、そういう分化があっても不思議ではありません。