■こたえたひと：茂似太(2001/06/18, 発言番号:968)
Re[1]: 昆虫の足の数についての質問
キーワード:推測
【茂似太の注釈】
質問のメールをありがとうございます。たいへん難しい質問で、はっきりした答えはありません。二人の学芸員のコメントを載せますが、それぞれ一つの考え方というだけで、正しいとは限りません。それどころか二人の学芸員で意見が食いちがってさえいます。このコメントを使って発表するときは、じゅうぶん注意してください。takenokoさんも自分なりの理由を考えてみて下さいね。
■発言したひと：昆虫研究室の初宿学芸員(2001/06/15, 発言番号:969)
Re[1]: 昆虫の足の数についての質問
キーワード:進化、生存競争
ご質問、拝見しました。とてもむずかしい質問で、正確な理由は判っていません。
昆虫はおよそ4億年前に地球上に初めて現れましたが、それ以前は体の後のほう（腹部：アカトンボでいうと、唐辛子みたいなところ）のあたりにも、脚がたくさんついていました。羽もまだ生えていなかったので、ちょうどムカデのような形だっただろうと想像されています。
昆虫が他の生き物と生存競争をし、進化していく上で、やがてピョンピョン飛び跳ねたり、また早く地面を走ったりする必要が出てきました。このようなことをするには、体のやや前のほうに、長い脚をいくつかもっているだけのほうが、やりやすいのではないかと思います。
では、どうして4本ではなく、6本なのでしょうか。
昆虫は脚が１本ぐらいとれても平気ですよね。家や学校のまわりで捕まえたことのある虫が、すでに脚が１本なかったという経験もしたことがあるかもしれません。もし昆虫の脚が4本（2対）しかなかったら、何かの事故で脚を1本失ったとき、体の片側には1本しか脚がなくなり、歩くことさえ、たいへん難しくなります。6本あれば、1本ぐらい脚を失ったぐらいでは、5本の残りの脚で、歩いたり跳ねたりすることは（ややスピードが遅くなるかもしれませんが）、十分できるでしょう。
それなら、8本（4対）あったほうが、もっと便利だと思われることでしょう。実際にこのような脚をもっている生き物はいます。クモですね。
昆虫とクモの大きな違いは、羽があるかないかです。いずれも、生きて活動していくためにはエネルギー源が必要です。しかし、1匹が一生の間に取ることのできるエサの量は限られています。その限られたエネルギーを、クモはもう1対の脚のほうに、昆虫は羽のほうに、それぞれ使い分けて生きているのかもしれませんね。
■発言したひと：植物研究室の岡本学芸員(2001/06/18, 発言番号:970)
Re[1]: 昆虫の足の数についての質問
キーワード:バランス、歩行
初宿学芸員の案を検討するために、今朝、虫の脚を1本切ってみました。ベランダにいた細長いカメムシのような虫です。右中脚を切ったのですが、歩いていました。切られた右中脚も正常に動かしていました（地面に着いてはいませんが）。ただ、別の脚（特に左後脚）が萎えたような感じで、バランスをとっているのかなと思いました。まあ、ここまでの結果は、初宿説を確認したようなものですが、初宿案よりも、もっと積極的な理由があるのではないかという気がします。
まず、第一に考えるべきは、陸上脊椎動物の２対の脚が、先祖の体制の制限を受けたものであった、ということではないでしょうか。それに対して昆虫は、いくらにでもできる脚の数の中から、6本（3対）がよいとしたのではないかと思います。
陸上脊椎動物の歩き方、走り方の多様性や、現生両生類や爬虫類の歩き方のにぶさ、陸上脊椎動物に頻繁に起こった2足歩行（疾走）への移行、四足動物に見られる歩行時と疾走時の脚の使い方の変化、などは四足歩行が必ずしも陸上生活に適していないということを示しているのではないか、という気もします。何と言っても、このような多様な哺乳類の走りが現れるまでに、（2足歩行を除けば）2〜3億年かかっているのです。
というわけで、私は6本脚というのが究極の陸上歩行の脚数である、という説明を見つけるべきではないかと感じます。とりあえず、どの脚を動かしてもバランスが崩れない最低本数、ということにしておきましょうか。4本脚でも3点支持ができるはずですが、長方形のテーブルの脚を1本切ったら倒れますよね。