■こたえたひと:樽野学芸員(1999/03/01, 発言番号:110)
Re[1]: 恐竜の食性についての質問
キーワード:臼歯の形
あくまでも、ほ乳類での知識が基礎となっており、主として臼歯の形を問題にします。肉をかみきるのに適した形か、植物をすりつぶすのに適した形かという点で、判断しています。たとえば、
肉をかみきるのに適した形:鋭い切縁がある。その縁はステーキナイフみたいに細かくギザギザになっていることもある。上下の歯は鋏みたいに、すれ違うように噛み合う。顎も鋏のように動く。
植物をすりつぶすのに適した形:上下の歯の噛み合う面は広く、そこには細かい凹凸がある。ただしこの形は、1本の歯でできていることもあるし、多くの歯が集まって、広い面積の細かい凹凸を作っていることもある。顎は、単純な開閉でなく、前後や横に動く。顎の動きは顎関節の形や、顎を動かす筋肉の付き方(頭骨の形)で判断する。
ラクダの話をした人は全然わかっていないようです。ラクダの前歯が「鋭い」ということならば「ヒトも肉食だ」ということになるのではないでしょうか。植物食や雑食の動物といえども、すりつぶすには、植物をかみきって口に入れないといけないので、咬みきるための鋭い前歯を持っていることがあります(といってもヒトの前歯程度)。とくにこのタイプの前歯は偶蹄類では一般的です。上の説明からおわかりいただけると思いますが、もし頭骨があれば、顎の動きがわかりますので、こんな判断にはなりません。また頭骨があれば当然臼歯も付いているでしょう。