自然史博物館によせられた質問(質問番号:429)

■質問したひと:大阪市福島区の八島平八さん(2004/11/27, 発言番号:918)
キリの分類についての質問
キーワード:図鑑、国語辞典
桐は、ノウゼンカズラ科、ゴマノハグサ科のどちらでしょうか? 家内が、生け花をしておりその教室で問題になったのですが、調べてみますと、植物 図鑑(樹木図鑑も含む)と国語辞典での取り扱いが、両方あり判然としません。

■こたえたひと:植物研究室の佐久間学芸員(2004/11/30, 発言番号:919)
Re[1]: キリの分類についての質問
キーワード:学説、類縁、グループ
植物の科の分類は、ご指摘の通り、時々、本によって異なっているときがあります。これは、その本の監修をした分類学者によって見解が異なっているためです。
科は類縁のあるグループをまとめっていったものですから、研究の進展や研究材料によって、見解は変わっていきます。これは、どちらがあっている、間違っているというよりは今の段階ではどの学説を採るか、というたぐいの問題ですので、どの図鑑によって○○科とした、という根拠(あるいは一貫性)がはっきりしていればいいように思います。

保育社 原色日本植物図鑑 
平凡社 日本の野生植物
などでは、ノウゼンカズラ科

北隆館 牧野新日本植物図鑑
では、ゴマノハグサ科 になっています。
国語辞典はこれによっているのでしょう。

ゴマノハグサ科はノウゼンカズラ科やゴマ科などに近縁なのは間違いのないところです。最近の考え方を代表するものとして、朝日百科植物の世界(2-16)に掲載されている大場秀章氏の文章を引用します。(同書ではゴマノハグサ科に分類しています)。
「キリ亜科は木本で、ノウゼンカズラ科に入れられることもあるが、子房が2室に分かれること、種子に胚乳があることからなどから、最近ではゴマノハグサ科に分類されることが多い」

■発言したひと:大阪市福島区の八島平八さん(2004/12/01, 発言番号:920)
Re[2]: キリの分類についての質問
キーワード:学会、統一
桐の「科」についてのお答え、有り難うございました。
一般の者にとって、何かわかりにくい・・と言いますのは、学会としての統一された見解があっても良いのではないかとも考えられますが、如何でしょうか。

■発言したひと:植物研究室の佐久間学芸員(2004/12/02, 発言番号:921)
Re[3]: キリの分類についての質問
キーワード:分類、植物目録
お気持ちはわかります。
が、実際のところ、植物の分類学的な研究は、未だに進行中の学問であり、一度定めたところで10年もたてば古いものになってしまいます。

牧野富太郎氏の没年が1959年、昭和36年初版発行の新日本植物図鑑はその後大きな改訂はされていません。
平凡社の日本の野生植物の木本シリーズが1989年ですから、およそ30年の学問の進歩が反映されたとお考えください。

研究者はそのあたりの事情を元に、新しい知見を採用するのが一般的ですが、なかなか国語辞典にまで浸透するのには時間がかかるものです。あえて言えば、古い考え方が必ずしも否定されているわけではなく、国(普段目にする自然状況)や学派が違えば考え方も違う、ということはままあることです。学会はこうした研究がぶつかり合うところであって、共通見解は次第に収斂されていく、というのが実情です。

どうしても何かの権威ある出典に従いたい場合には
環境庁自然保護局(1988)植物目録1987. 大蔵省印刷局. 4600円+税
というのがあります。
植生調査のための情報ディレクトリのページ
の紹介によると、

環境庁(国)が用いる植物名(学名、和名)を、分類学者の委員会の検討を経て定めたもの。現在、いろいろな分野での標準和名・学名の基準となっている。分類順リスト、学名ABC順リスト、和名五十音順リストからなり、和名←→学名の変換をする場合や、野外で外国人に植物を教える際などに利用される。日本全国のすべての植物種を対象としているが、琉球産の自生種や、帰化植物に漏れ落ちがある。また、学名の命名者名が省略されている。

ということです。
概ね、平凡社の「日本の野生植物」に近い内容のようですが。

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キリの分類についての質問(2004/11/27, No:918)
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