自然史博物館によせられた質問(質問番号:402)

■質問したひと:東京都の小金昭さん(2004/09/29, 発言番号:862)
小さな巻貝についての質問
キーワード:胎殻、異旋
 趣味で微小な貝類を研究しています。クチキレガイモドキという小さな巻貝があるのですが、手持ちの顕微鏡で、その殻の先端(胎殻)の部分を見ると、他の巻貝と比べると、変な形をしていました。全体の殻の螺旋とやや違う巻きかたのような、なにか殻の先端に吹き出物でもできたような形状をしていました。
 貝類関係の本を見ると、この種類の貝の説明部分ではありませんが、「異旋」と言う 記述が目に付きました。あまり詳しい説明は無かったのですが、クチキレガイモドキ類もこれに該当するのでしょうか。
 それと、クチキレガイモドキの生態、生活しについても教えてください。出来ればそれらを研究した論文などもご教示いただければと存じます。

■こたえたひと:第四紀研究室の石井久夫学芸員(2004/10/07, 発言番号:863)
Re[1]: 小さな巻貝についての質問
キーワード:異旋目、トウガタガイ科
クチキレガイモドキ(クチキレモドキ)について
 図鑑などに載っているように、この仲間はトウガタガイ科クチキレガイ亜科に属していて、最近改められた分類によると異旋目(異旋上目)に入ります。非常に奇妙な成長をするのが特徴で、胎殻は左巻で螺殻は右巻と巻き方が逆転します。巻いている軸の方向もそのときに変わり、まるで、ふたつの別の種類の貝をくっつけたようです。軸の傾き角度は種類によってかわります。もともとあまり見分ける特徴のない貝なので、貝殻全体の形がよく似ていても胎殻の形状などをよくみないと、違う種類に間違ってしまうおそれがある難しい分類群です。この仲間は、ゴカイ類や二枚貝など他の動物に外部寄生し、体液を吸っていきているそうで、歯舌は退化しています。
 奥谷喬司編「日本近海産貝類図鑑」(2000年、東海大学出版会)という新しい大きな図鑑には、多くの種類がのっていて、最新の分類にのっとっています。この図鑑が普通に見られる一番の文献だと思います。インターネットを利用してPyramidellidae(トウガタガイ科)やOdostominae(クチキレガイ亜科)またはOdostomia(クチキレモドキ属)などをアルファベットで検索すれば、世界のこの仲間の写真などを見ることができます。
 論文については、この貝について詳しく調べたことがないので、日本語で書かれたわかりやすいものだけでなく、英文で書かれたものについても、よく知りません。日本でこの仲間を研究しているのは、上記の図鑑のトウガタガイ科のところを書かれた方で、現在、山口県の萩市郷土博物館におられる堀成夫博士です。

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小さな巻貝についての質問(2004/09/29, No:862)
Re[1]: 小さな巻貝についての質問(2004/10/07, No:863)