■こたえたひと:第四紀研究室の石井久夫学芸員(2004/10/07, 発言番号:863)
Re[1]: 小さな巻貝についての質問
キーワード:異旋目、トウガタガイ科
クチキレガイモドキ(クチキレモドキ)について
図鑑などに載っているように、この仲間はトウガタガイ科クチキレガイ亜科に属していて、最近改められた分類によると異旋目(異旋上目)に入ります。非常に奇妙な成長をするのが特徴で、胎殻は左巻で螺殻は右巻と巻き方が逆転します。巻いている軸の方向もそのときに変わり、まるで、ふたつの別の種類の貝をくっつけたようです。軸の傾き角度は種類によってかわります。もともとあまり見分ける特徴のない貝なので、貝殻全体の形がよく似ていても胎殻の形状などをよくみないと、違う種類に間違ってしまうおそれがある難しい分類群です。この仲間は、ゴカイ類や二枚貝など他の動物に外部寄生し、体液を吸っていきているそうで、歯舌は退化しています。
奥谷喬司編「日本近海産貝類図鑑」(2000年、東海大学出版会)という新しい大きな図鑑には、多くの種類がのっていて、最新の分類にのっとっています。この図鑑が普通に見られる一番の文献だと思います。インターネットを利用してPyramidellidae(トウガタガイ科)やOdostominae(クチキレガイ亜科)またはOdostomia(クチキレモドキ属)などをアルファベットで検索すれば、世界のこの仲間の写真などを見ることができます。
論文については、この貝について詳しく調べたことがないので、日本語で書かれたわかりやすいものだけでなく、英文で書かれたものについても、よく知りません。日本でこの仲間を研究しているのは、上記の図鑑のトウガタガイ科のところを書かれた方で、現在、山口県の萩市郷土博物館におられる堀成夫博士です。