■こたえたひと:樽野学芸員(2001/01/06, 発言番号:683)
Re[1]: 哺乳類の頭蓋骨についての質問
キーワード:側頭窩、側頭筋
眼窩の形態を大きく3段階に分けると
1.眼窩と側頭窩が完全に独立している。→真猿類(キツネザルやメガネザルなど原始的なサルをのぞくサルと類人猿およびヒト)
2.眼窩の輪郭は円形になっているが、内部では、眼窩と側頭窩が通じている。→反芻類(シカ、ウシなど)、ウマなど
3.眼窩の輪郭が円形にとじていない。→食肉類など多くの哺乳類。となります。この他に一部の食虫類のように、側頭窩も開いている(頬骨弓が完全につながっていない)ものもあります。
本題であるご質問に対する答えなのですが、はっきりしたことはわかりません。機能的には眼窩は眼球を納めるところであり、側頭窩は側頭筋のためのスペースです。眼窩が側頭窩から独立していれば、これら二つの器官の働きが互いにじゃまされないという利点があるのかもわかりません。真猿類は樹上生活に適応しているものも多く、立体視のため目が前を向いています。立体視のためには眼球を安定させる必要があり側頭筋の動きに影響されない独立した眼球の入れ物が必要だったのかもしれません。また、眼窩が独立している方が、眼球を動かす筋肉を自由に配置できますから、眼球の微妙な動きを可能にするという利点があるのかもわかりません。
では食肉類など大部分の哺乳類では、眼窩と側頭窩がつながっている利点は何なのでしょう。そのあたりがよくわかりません。大きな側頭筋が収縮するときに、より広いスペースを使えるといった利点でもあるのでしょうか。