■こたえたひと:佐久間学芸員(2001/02/27, 発言番号:756)
Re[1]: 葉につくカビについての質問
キーワード:樹種、植物病原菌、気孔、ワックスの層
どのような木とカビ(植物病原菌)を観察されておっしゃっているのかで解答は変わります。
まず、葉のうらにつくカビ、というのは確かにたくさんあります。サビ病の仲間やアラカシにつくムラサキウドンコビョウ菌など確かに裏に生えるものはたくさんあります。こうしたカビが葉の裏につく理由は2つあります。
まず、葉の裏には気孔がたくさんあること。葉の裏の気孔を利用して、植物はガス交換しています。そのため気孔は葉の内部の柔組織に通じています。植物病原菌がカビとして目に見えるのは胞子(や分生子)をとばすために表面に子実体(や分生子柄)を形成するときです。葉の表面や内部に住んでいるこれらの菌にとって、気孔はよい足がかりになるのです。また、気孔を使わないカビにとっても葉の裏は表に比べて葉の表面を保護しているワックス(クチクラ)の層がうすく、のびやすいというのがもう一つの理由です。
一方で葉の表に生えるカビもたくさんあります。生け垣のアラカシなどを真っ白にして生えるアラカシうどんこ病等が典型です。分生子が葉の表面につき、そこでのびる弱い寄生菌のこの菌は、表側を好みます。
表が好きか、裏が好きかはその菌の生活史を考える必要があると思います。もちろん光が胞子形成に関わる部分がないことはないのですが、その前に植物の葉に表と裏がある以上、全く裏に生えなくなるということはないでしょう。