自然史博物館 質問コーナー(発言の個別表示)

■発言したひと:波戸岡学芸員(2004/07/11, 発言番号:823)
Re[1]: 卵胎生についての質問
キーワード:卵生、胎生、栄養
お話から察して魚類でお答えします。まず一般的な繁殖の話から。
 有性生殖をする動物では、その繁殖様式は、一般的に次のように分けられます。
卵生:卵で体外に生み出され、胚(子の初期のころ)はその卵黄を栄養として成長し、孵化する。
胎生:胚ないし胎仔は、親の体中で、親から直接栄養をもらって成長し、親と同じ格好で出産される。
卵胎生:親と同じ格好で出産されるが、親の体の中にいるときは、卵の栄養のみで成長する。孵化は親の体内。

 魚類では、硬骨魚類(硬い骨を持ったふつうのさかな)は多くの場合卵生で すが、軟骨魚類(サメ・エイ類)では、卵生(たとえば、ネコザメ)以外に、 卵胎生の種類も結構あります。ところで、実をいうと、近年、このサメ類を研 究が進み、卵胎生とは言っても、最初からずっと卵の栄養に頼るのではなく、 後になって、親から栄養をもらう種類(鋭い歯をしたメジロザメ類)もあることがわかってきました。このような事情から魚類の専門家の間では最近、卵胎 生という語は使わず、卵を産むのは卵生、こどもを産むのは胎生というように なってきています。もちろん、サメ類には中には成長のほんの初期だけ卵の栄 養で、ほとんどは親から栄養をもらう、真の胎生に近いサメもいます。

さて、
> また、卵からかえってから母親の胎内で兄弟が共食いし、
> 勝ち残った1匹が外に出てくるサメがいるという話
ですが。
 勝ち残るのは1匹かどうかは知りませんませんが、共食いをするのは事実で す。メジロザメ類は、卵の栄養がなくなると、後は親からもらうのですが、ネズミザメ類(ホオジロザメやアオザメなど)では、卵の栄養がなくなると、母親の卵巣から落ちてくる卵を子宮で食べて成長します。また、シロワニは、兄弟・姉妹を食べると言われています。
卵の殻(から)のことですが、ニワトリの卵のようなイメージをされているよ うですね。魚類では堅さはいろいろです。サメ・エイ類の子宮と卵巣の間の輸卵管には卵 殻腺があってそこから出されるゼラチン質や角質の分泌物によって卵に殻がで きます。卵生のネコザメの殻は螺旋状をしており硬いです。硬い殻といって も、ニワトリの卵とはちがって、むしろ弾力姓があります。また、お腹で孵化 する胎生のサメ類では、この卵殻腺そのものの発達も悪く、硬い卵殻はできま せん。残った殻は分解され、親の体に再吸収されるのではないでしょうか。また、生徒さんの言われるように、食べているのかもしれません。卵食いのホオジロザメはお腹のなかで生え替わった自分の歯を飲み込んでいるそうです。
 ジンベエザメは、最近まで、卵生と思われていたのですが、出産の直前にお腹 の中でこどもが孵化するということがわかってきました。台湾で、捕獲された ジンベエザメのお腹から、こどもと空の卵殻がでてきたのです。卵殻の方が数が少なかったようです卵殻は何らかの方法でなくなったのでしょうが、わかりません。写真を見ると卵殻は柔らかそうです。お腹でちぎれて跡形がなくな ったのか、出産の間にこどもと一緒に出ていったのかもしれません。

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